心臓は、胚盤の最前方部の中胚葉の中に生じた1本の心内膜管から生じる。その壁が不均一に成長するために、心内膜管に静脈洞、心房、心室、心球の四つの拡張部が生じる。胚の成長に伴い、この膨らみを伴う管は心室部分が腹下方にずれてS字形に曲がり、心臓の腹側下部に心室、その背側上部に心房という配置ができる。さらに心房部分が両側に膨れ出して左右の心房が生じ、心室部分は腹側から見て反時計向きにねじれて左右の心室が生じる。左右の心房の間に最初にできた一次中隔には、細胞変性により孔が開き、これと重なるように生じた二次中隔の下縁から一次中隔の孔を通る通路が卵円孔である。卵円孔は、胎生期に胎盤から酸素の供給を受ける間、酸素に富む右心房の血液を肺を通さずに左心房に通すバイパス路で、出生後に肺呼吸が行われるまで開いている。心室中隔の大部分は、心室筋が伸び出して作るため筋性であるが、心房に近い一部は膜性である。大動脈と肺動脈の仕切りは、心球の壁がらせん状に隆起して内腔を仕切ることにより作られる。心房中隔欠損や心室中隔欠損、ファロー四徴症といった心臓の先天的な奇形は、このような発生過程の異常として理解できる。