古生代に生まれた原始的な脊椎動物は、数億年の時間をかけて、さまざまな形の子孫を生み出してきた。その系統発生の歴史を通じて、背骨の背中側に中枢神経系、腹側に消化管をもつという脊椎動物の基本的な構築は変わらなかった。この構築によって、どれほど姿や形が変わっていても、さまざまな脊椎動物を同じ仲間として認めることができる。一方、動物の生命を維持するための機能を行う内臓は、脊椎動物が進化する間にその生息環境に応じて形を変えていき、極端な場合には、同じ機能が別の内臓器官で行われるようにもなった。ヒトの身体を他の動物と比べたときに、おもにこの内臓器官に大きな違いが目につく。脊椎動物の身体を大きく二つに区分して、運動を行う体性の部分と、生命維持を行う臓性の部分に分けるのは、このためである。内臓の機能としては、消化、呼吸、排出、生殖の四つが区別される。これらは、生命の最小単位である細胞にも見られる生物の基本的な機能である。消化によって得られた炭水化物などの栄養物を、呼吸によって得られた酸素を用いて燃焼させ、生命活動を行うためのエネルギーが得られる。その際に生じた不用物は体外に排出されなければならない。また細胞や個体の寿命は有限なので、生殖で次の世代を生み出すことにより、生命という存在が維持されるのである。