細胞は、顕微鏡で見るような小さなもので、人体をはじめすべての生物体を構成する。細胞はおおむね数十ミクロンほどの大きさで、形や大きさはきわめて多様だが、構造と機能をよくみると、はっきりした共通点がある。第1に、複雑な構造と機能が、エネルギーを消費することによって維持されている。第2に、細胞膜という容器に包まれていて、細胞の中と外とが明確に区別されている。第3に、子孫を作るための仕組みが、細胞核の中の遺伝情報として蓄えられている。細胞は、人体から取り出しても適当な条件を与えれば、エネルギーを消費して生き続け、自分と同等の細胞を生み出して増殖することができる。人体の中で、肉眼的なレベルの形をもつ構造体、例えば心臓や脳などを器官(organ)という。器官は特有の素材からできている。組織(tissue)は、細胞が集まってできた器官の素材である。組織を作る細胞に特性の異なる4種類のものを区別する。細胞がシート状に集まって二つの空間の境界面を作る上皮組織、細胞外にコラーゲンなどの線維状のたんぱく質を分泌して構造を支持する結合組織、細胞内に収縮装置を発達させて運動を行う筋組織、長い突起を伸ばして遠方への情報伝達を行う神経組織である。人体の器官は、おおむねこれら4種類の組織の組み合わせにより作られている。