人体を構成する成分のうち、約60%は水である。40%の水は細胞の中に、20%の水は細胞の外にある。細胞にとってすぐ外の液の成分は、細胞の生存にとって不可欠の環境であり、内部環境とよばれる。細胞の生命を保つために、この体液の組成は一定に保たれており、内部環境の恒常性(ホメオスタシス ; homeostasis)とよばれる。アメリカの生理学者のキャノンが1932年に提唱した概念である。たとえば、体液のカリウムイオンの濃度は、通常はナトリウムの30分の1程度だが、2倍に増えると、神経細胞や筋細胞が正常な興奮を起こせなくなり、心臓と神経の働きが停止する。体液の量と成分を一定に保つ働きは、もっぱら腎臓によって行われる。水とイオンの出入りは、消化器・呼吸器・皮膚でも行われるが、体液を一定に保つという目的ではなく、消化液の分泌や腸内容の吸収、呼気の加湿、発汗など、それぞれの器官の目的に合わせて水とイオンの出入りが行われる。腎臓の機能が失われた腎不全のときには、人工透析によって老廃物を排出することができるが、イオン濃度の調節ができないために、カリウムを多く含む食品(果物、刺身など)の摂取を控える必要がある。