遺伝子の情報は、たんぱく質を作るアミノ酸の配列として翻訳され、そのたんぱく質が、細胞の活動を制御していく。すなわちたんぱく質の合成と分泌は、遺伝情報を細胞の活動に伝えるためのシステムである。遺伝子の本体は、細胞核の中のDNA(デオキシリボ核酸)であり、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基がつながってできた長い鎖状の分子である。このDNAの塩基の配列そのものが遺伝情報で、これをもとにしてたんぱく質が合成される。たんぱく質は、20種類のアミノ酸が、遺伝情報の指示に従って配列したものである。DNAの塩基配列は、伝令RNAに転写され、核の中で一部の塩基が抜き取られた後、細胞質に送られる。塩基配列の内で、抜き取られる部分をイントロン(intron)、細胞質に運ばれる部分をエクソン(exon)、そしてこの抜き取る過程をスプライシング(splicing)という。伝令RNAは核から出て、細胞質のリボソームという小さな顆粒のところで、たんぱく質の合成が行われる。このときに、アミノ酸をくっつけた転移RNAが仲立ちになり、伝令RNAの3個の塩基の並びを正しく認識してアミノ酸を受け渡し、たんぱく質の鎖を一つ伸ばす。細胞質中に遊離するリボソームで作られたたんぱく質は、細胞質内のたんぱく質になり、粗面小胞体に付着したリボソームで作られたたんぱく質は、ゴルジ装置に運ばれ、そこで糖を加えられた後、細胞膜に埋め込まれたり、細胞外に分泌されたりする。遺伝情報が人体や細胞の構造・機能に反映される過程は、すべてこのたんぱく質の合成を通して行われる。