人間の身体は、受精卵から始まり、細胞分裂を繰り返してできあがっていく。たいていの組織や器官では、細胞はいつまでも分裂し続けるのではなく、器官ができあがった時に分裂を終える。その時期は器官によりさまざまである。中枢神経や骨格筋の細胞は、おおむね胎児の間だけ分裂し、出生後には細胞が肥大、分化するだけで、もはや分裂して数を増やすことはない。肝臓や腎臓の細胞は、生後もまだ分裂して数を増すが、思春期までには分裂を停止して、後は次第に数が減るだけである。さらに血球を作る造血組織の細胞や、胃や腸の粘膜の上皮細胞は、一生を通じて細胞分裂を行い、補充されていく一方で、寿命の来た細胞が死んでいくので、細胞数はほぼ一定に保たれている。生体内の細胞には、このように一生の間分裂を続けるものもあるが、生体から取り出して試験管内で培養した細胞は、ある一定の回数分裂した後、もはや分裂を起こさなくなることが知られている。この分裂寿命(division life span)は、若い人から取り出した細胞では大きいが、老人から取り出した細胞では小さい。このことは、身体の老化が進むと、細胞そのものも老化することを示している。