細胞の死は、必ずしも個体の老化や死と結びついてはいない。細胞死は、受精卵が発生して器官や組織を作る形態形成においても、重要な役割をする。死んでいく細胞そのものに細胞死がプログラムされている場合をアポトーシス(apoptosis)という。手が発生する際には、いったん平たい板状の構造ができ、その後、指と指の間の部分の細胞が死んで、独立した指ができあがる。細胞死を引き起こす抗体や、これに結合する細胞膜のたんぱくがいくつか見つかり、注目されている。形態形成過程での細胞死には、ホルモンなどの液性因子の有無によるものも知られている。男性の生殖器はウォルフ管から、女性の生殖器はミュラー管から生じるが、発生期には、男女の差なくウォルフ管とミュラー管が形成される。男性では、精巣から分泌されるミュラー管抑制物質の影響でミュラー管が完全に退化し、消失する。女性では、男性ホルモンがないためにウォルフ管が退化する。