人間の感覚は、視覚・聴覚などの特殊感覚と、皮膚などの一般感覚がある。どちらの感覚も老人になると鈍くなって、感知できる最小の刺激すなわち閾値(しきいち)が上昇する。とくに視覚は、わずかでも衰えると日常生活に支障をきたす。40歳を過ぎる頃になると、水晶体の弾力が失われて遠近調節ができなくなる。これが老眼(presbyopia)であり、老眼鏡によって調節する必要がある。老人になると、水晶体に多少とも濁りが生じ、それが進むと白内障(cataract)になる。もはや眼鏡では視力が出せず、治すためには外科的に水晶体を摘出する必要がある。聴覚も年齢とともに感度が悪くなる。とくに50歳を過ぎると3000ヘルツ以上の音域で聴力の低下が著しくなり、高音域の感度が悪くなる。聴力の低下には個人差が大きい。触覚や痛覚といった皮膚感覚も年齢とともに閾値が上がるが、日常生活に不便をきたすことはあまりない。