「バイオエシックス」の言葉が登場したのは、1970年代初めのアメリカにおいてであった。「生命」を意味する「バイオ」と「倫理(学)」を意味する「エシックス」を結びつけた、この語を作ったとされるのは、がん研究者のポッター(Potter,V.R.)で、有限な地球で人類がいかに生き延びるかを問題とした「生存の科学(the Science of Survival)」としての「バイオエシックス」を提唱したが、実際にはこの意味から離れて、60年代以降の、生命科学や医療をめぐる倫理問題の議論に用いられるようになり広まった。日本語では「生命倫理(学)」と訳されるが、78年に出版された記念碑的著作である「生命倫理百科事典(Encyclopedia of Bioethics)」の第2版(95年)では、「学際研究において、さまざまな倫理学的方法論を導入して行う、生命科学と医療についての倫理的な洞察・判断・行為・政策を含む倫理的次元に関する体系的研究」と定義され、現代社会の中での生命科学と医療をめぐる広範な問題を扱うものとされている。