クローンは同じ遺伝子を持つ個体を意味する。1997年2月にイギリスの科学誌「ネイチャー」の表紙を飾ったクローン羊ドリーの姿は、クローン技術が人間にも応用されることに対する危惧(きぐ)を世界各国に抱かせた。この問題はサミット(主要先進国首脳会議)でも論じられ、規制へと議論は進んだ。なかでも法的規制は日本がいちばん早く、「クローン技術規制法」が2001年6月6日に施行された。もっとも、この生命科学研究に対する初の法律による規制での罰則の対象は、クローン胚の子宮への「移植」ということでありクローン胚の「作製」そのものではなかった。しかし、文部科学省は、これまで人間の体細胞の核を使ったクローン胚の作製は当面禁止する研究指針を示してきたが、同省の生命倫理調査会は04年7月、研究目的のためのクローン胚の作製を認める方針を示した。その後、クローン胚の研究指針を策定する同省の作業部会は、05年11月、研究目的のためのクローン胚作製に利用する卵子は、手術で摘出した卵巣にある卵子と、不妊治療目的で採取した卵子で不妊治療には使わなくなった後の卵子とした。また、06年6月には、女性ボランティアからの卵子の提供は当面認めないが、将来の容認の際の必要な条件については検討することを決めた。