出生前診断の代表的技術には、羊水穿刺、絨毛膜採取の他にトリプルマーカーテストがある。これは妊娠10週ぐらいの妊婦の血液を調べ、胎児がダウン症や二分脊椎などである「確率」を知るものである。母体への影響がなく簡便なため、容易に検査結果が人工妊娠中絶に結びつく可能性が指摘された。そのため、厚生省(当時)厚生科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会の審議により、1999年7月に「母体血清マーカー検査に関する見解」が出され、検査の説明と実施に当たり配慮すべき事項について具体的な指針を示した。一方、産婦人科医たちは、この検査の結果による人工妊娠中絶の多さに危惧を覚え、ダウン症児を持つ親の団体からの批判もあり、本検査の紹介、説明を自粛する動きを見せた。そもそも、日本では条件付き中絶を許容する母体保護法でも、胎児の条件による中絶の選択(胎児条項)を許してはいない。また、超音波診断で判明される多胎妊娠をめぐり、三つ子以上を双子または一人にする減数手術が行われていることも倫理問題となっている。