抗がん薬ゲフィチニブ(商品名「イレッサ」)の副作用で複数の患者が死亡したとされる事件で、2004年、遺族が国と製薬会社を相手に起こした損害賠償訴訟。遺族側は、重大な副作用の危険性を知りながら適切な対応を行わなかった、と主張。11年11月の東京高等裁判所控訴審では、一審判決が取り消され、遺族側の請求が全面的に退けられた。最大の争点は、02年7月の輸入承認時に、医療機関に向けた添付書類によって副作用の注意喚起を十分に行ったか、という点であった。製薬会社は、添付書類の重大な副作用欄の4番目に間質性肺炎を記載していたが、その後、患者の死亡が相次いだことにより、02年10月に厚生労働省が「緊急安全性情報」を出して添付書類を改訂している。控訴審判決では、承認時に疑われた臨床試験(治験)での副作用は、イレッサ投与との因果関係が認められず、間質性肺炎は抗がん薬などにより発症する一般的副作用とした。1~3番目に記載されたものも重大な副作用であり、死亡する可能性があったとして、記載に製造物責任法(PL法)上の「指示・警告上の欠陥」はないとした。薬の臨床試験における副作用をいかに認識するか、また、副作用の説明はいかになされるべきか、薬害をめぐる行政のあり方や、研究者の倫理の問題も指摘されている。