1964年にヘルシンキで行われた世界医師会の総会において採択された、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」のこと。医学研究における人体実験の必要性は一般に認められるとしても、研究優先のあまり、被験者である患者らの人権への配慮がなされていなかったことへの反省が込められていた。ヘルシンキ宣言が世界の医師・医学研究者に対し、人体実験における被験者のインフォームド・コンセントと実験計画の事前審査を行う倫理委員会の重要性を明確にしたのは、75年に東京で開催された世界医師会でのヘルシンキ宣言の改定による。このヘルシンキ宣言はその後何回か改定されているが、2000年10月に、エディンバラでの世界医師会でも改定された。そこでは、ヒトゲノム計画への企業の参画や国際的な利害関係を反映して、研究資金提供者に対する倫理的配慮も明記されるに至っている。日本では、現在すべての大学医学部、医科大学に、そして主要な研究機関に、倫理委員会が自主的に設置されていて、そこでの審議の基礎となるヘルシンキ宣言は大きな役割を担っているが、欧米に比べて医師集団の倫理綱領のあり方が異なる日本においては、何らかの法的規制を検討する時期にきている。