ナノテクノロジーに関する倫理問題について研究する学問分野のこと。ナノテクノロジーとは、10億分の1メートル(1ナノメートル)という、極微領域の物質に関する応用技術のことである。この技術の基本的な考え方は、1959年にアメリカ人物理学者のリチャード・P・ファインマン(Richard Phillips Feynman)が指摘していたが、80年代になってパイオニアの一人であるアメリカ人工学者キム・エリック・ドレクスラー(Kim Eric Drexler)が、例えば肉やパンを原子・分子から直接作り上げるような、新しい技術の可能性を提唱して注目を集めた。具体的には、カーボンナノチューブやフラーレンといった微細構造物が作られ、ナノレベルでの機械や生体分子の製造・操作が研究されている。特に遺伝子操作、薬品の開発など医療面での可能性が議論されている。このような研究開発振興の中で、ナノ粒子の安全性が問われており、また技術的な革新性から、人間生活に与える影響について哲学・倫理学の視点でも検討されている。