救急搬送患者の病院受け入れ拒否、地域の中核病院閉鎖といった日本の医療機関や制度の混乱をめぐる問題の中で、表面化した要因の一つ。都市部に医師が一極集中していることや、勤務条件の過酷さに耐えかねた救急医・産科医・小児科医への志望者減などが言及されているが、今日の医師不足の状況を引き起こした直接の原因は、2004年4月から必修化された医師の新臨床研修制度であるとされている。それまで医学部卒業生の研修先は、本人が卒業した大学の医学部付属病院などであることが一般的で、所属する医局・講座から関連病院に派遣されるという形で地域の医療体制が保たれていた。08年11月、文部科学省は状況を打開すべく、各大学の医学部入学定員の増加、地域枠の入学定員の設定などを発表。しかし即効性の面で疑問視する声もある。一方で産科医、小児科医などの不足はますます深刻化しており、そうした状況下での新臨床研修制度のスタートは、拙速の感を免れなかったとの批判も高い。現在、厚生労働省では制度自体の見直しを余儀なくされている。