主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病に苦しむ患者が、自らの意思で、人工呼吸器の取りはずしを要望した問題。2008年10月、千葉県にある病院の倫理委員会が、全身の筋肉が徐々にまひする難病のALS患者が提出した、意思疎通ができなくなった場合は人工呼吸器をはずして欲しいという要望書について、本人の意思を尊重することを提言した。これは、個別のケースについての対応、という点で注目された。これまでも、回復の見込みのない患者から、医師が人工呼吸器をはずすという事件があり、それらの裁判での争点は、本人の意思が明確であったかどうかに絞られてきた。しかし本件では本人の意思の明確性と、ALSという、がんの末期患者とは異なる問題が提起されている。つまり、回復の見込みがないとしても、予後について、がん患者と同じように判断できるかということである。回復見込みのない高齢者や末期患者に対する治療中止に対しては、法制化を求める声もあり、07年6月、厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を公表した。しかし、これをALS患者への対応にそのまま適応するのは、難しいと考えられる。