作用の仕組みが異なる、2種類以上の薬剤に耐性を獲得した、細菌などの微生物のこと。以前は突然変異によるものと考えられていたが、最近になって、薬剤に耐性を示す遺伝子が、細胞内で複製される染色体以外のDNA分子(プラスミド)によって伝播することがわかってきた。2010年9月3日、東京都内の帝京大学病院で多剤耐性アシネトバクター菌の院内感染が起確認され、同月1日までに感染した患者46人のうち27人が死亡したことが明らかになった。そのうち9人は、感染と死亡との因果関係が疑われた。薬剤耐性を持った病原菌の院内感染は、今までにも問題となっていたが、抵抗力が低い高齢患者の増加に加えて、多剤耐性菌の種類が増えてきたことから、大学病院という最も設備の整った病院でも感染拡大が懸念されている。また、海外での多剤耐性菌の出現も近年報道されており、国際的な対応策がとられる必要性も増している。