救急搬送患者の受け入れを複数の病院が拒否し、たらい回しの中で患者が死亡する、または妊婦が出産に支障をきたす、といった社会問題。2006年8月、奈良県内で救急搬送された妊婦が奈良県立医科大学附属病院に受け入れを断られたのを皮切りに、18の病院から相次いで拒否され、最終搬送先で1週間後に死亡した事件で、一躍注目を集めるようになった。その後も病院側の受け入れ拒否による、患者死亡などの事件報道が続発し、政府や行政が対策に乗り出した。総務省消防庁では、07年より救急搬送受け入れ状況の調査を開始。11年7月に発表した10年の報告によると、重傷者で3回以上受け入れを断られた件数は、前年比24%増の1万6381件。重傷者以外で3回以上受け入れを断られた件数は、妊産婦587件(前年比13%増)、15歳未満の小児1万924件(同14%増)。搬送件数そのものの増加もあるが、都市圏での医師や看護師の不足などによって、受け入れへの対応ができていない現状が明らかとなっている。