人工的に合成したマイコプラズマ・ミコイデスという細菌の遺伝子を、別の細菌で自己増殖させて作った細胞。アメリカのバイオ企業であるクレイグ・ベンター研究所が、2010年に発表した。まったくの人工物ではないが、生命体の人為的作成への可能性を示したものとして注目され、生命に尊厳を持たせる倫理的、宗教的生命観には衝撃を与えるものとなった。また、11年9月には東京大学の研究チームが、有機化学的方法で自己増殖する人工細胞の作成に成功したと発表。こちらは人工的に構成された分子集合体だが、細胞の3要素を「境界」「情報」「触媒」とした、いわゆる細胞の定義が問われ、合成細胞とは異なる問題を提起している。これらの研究分野は合成生物学とも呼ばれており、生命体の作成や利用などをめぐり、倫理問題が問われるようになった。