様々な事情から親が育てられない新生児を、匿名で預かる施設のこと。中世ヨーロッパの修道院などに設けられ、現代ではドイツが先駆的とされる。日本では2006年に九州にある民間病院が熊本市に設置申請を行い、厚生労働省への照会を経て、07年5月から「こうのとりのゆりかご」と称して運用が開始された。病院側は生命の尊重を優先し、緊急避難的な措置とも説明している。しかし、預けられた子どもの安全は確保されるとしても、保護責任者遺棄罪などへの抵触の可能性、子どもが出自を知る権利などについて、倫理的な問題が指摘されている。09年11月、熊本県の検証会議が同施設に関する報告書を提出し、09年9月までの利用は51件で、39人の身元が判明していることなどを発表。施設の利点は認めつつ、匿名性を排除する努力を求めた。12年1月、同病院は施設を改修して内ドアを設け、病院への連絡先を記載した手紙をとらないと開かないようにした、と発表した。従来は手紙をとらなくても、子どもを預けることができるようになっていた。