胃ろうとは、患者が口から食べ物をとれなくなった場合に、腹部に小さな穴を開けて胃へ直接、栄養物を送り込む方法のこと。人工栄養ともいう。2012年6月、日本老年医学会は、終末期にある高齢者に対する胃ろうなどの人工的な水分や栄養の補給について、その措置を施すことや中止などを判断する際の指針を決定した。指針は医療・介護関係者向けで、人工栄養を施す際には、口からの栄養摂取が可能かどうか十分に検討することを求めている。また、胃ろうなどの処置により延命が可能になっても、患者本人の意向にそぐわない場合は、複数の医療関係者と本人、家族らが話し合ったうえで差し控えることを可能としている。処置の開始後も、苦痛を長引かせるだけであるような場合には、話し合いで減量や中止ができるとしている。こうした指針の背景には、まず患者本人の意向の尊重があるが、中止か続行かの判断における医療者側の苦悩を軽減する目的もある。しかしながら認知症が進行し、寝たきりになった患者などへの対応には、慎重な判断も求められている。