製薬会社ノバルティスファーマ社(本社・東京都港区)が販売する、降圧剤バルサルタン(商品名「ディオバン」)の医師主導臨床研究で、不正疑惑が発覚したことで提起された問題。研究には、京都府立医科大、東京慈恵会医科大、名古屋大、千葉大、滋賀医科大などが関与し、各大学には多額の研究費が提供されていた。不正とみなされた点は、研究の枢要部である統計解析に、製薬会社社員が所属を変えて参画したこと、いくつかの大学の研究論文でデータ操作がなされていたこと、などがあげられている。今回の研究は、脳卒中や狭心症のリスク低減など、ディオパンの副次的効果を実証するために行われたが、その研究論文を販売促進に利用したことも指摘されている。本来、薬の研究開発には薬事法に基づいた臨床試験(治験)が行われるが、臨床研究はそれとは異なり、法的な規制はなく、厚生労働省が決めたガイドラインに沿って、各大学・研究機関が自主的な規制の範囲で行う。その際には倫理委員会の審査があるが、大学や機関の間で統一した見解があるわけではない。そこで、政府からも倫理審査のあり方を見直し、強化させる動きが出てきている。