腎臓がんやネフローゼなどの患者から治療のために摘出された腎臓(病気腎)を、他の患者へ移植すること。2006年10月、愛媛県の病院で腎臓移植をめぐる臓器売買事件が発覚、その捜査の過程で病気腎移植が行われていたことが判明した。執刀医は移植による害はなかったとの実績を強調し、正当性を主張したが、日本移植学会は病気腎の移植治療への利用は医学的に問題があるとして認可を求めてこなかった。また、厚生労働省も臨床研究以外の病気腎移植の実施を禁じていた。そうした中、16年6月に病院側が病気腎移植を先進医療として申請し、17年10月19日に厚生労働省の審査部会が条件付きで認める決定をした。先進医療となれば、有効性と安全性が未確立なため公的医療保険の対象外であった医療技術でも保険診療との併用を認められることになる。しかし、前提条件である病気腎の全摘出は現在減少しており、ドナーの対象年齢も50歳以上とされたので、実施数はわずかとみられている。全摘出によるドナーのリスクや、レシピエントのがん発症リスクなど、安全性への懸念も依然として指摘されている。