自宅などで心肺停止になった終末期患者を救急隊が搬送する際に、蘇生処置を行うかどうかについて示した判断基準のこと。現在、総務省消防庁の基準では生命に危険がある場合には搬送時に救急隊員に処置を行うことを求めているが、本人は蘇生処置を望んでいないが家族がその意思に対応しきれず、救急車を要請してしまうというケースも多い。こうした状況を受け、救急医療に携わる医師や各地の消防本部で構成された日本臨床救急医学会(JSEM)は、2016年4月7日に「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言」を示した。そこでは、基本的には蘇生措置を施すが、かかりつけ医の指示があれば心肺蘇生などを中止するとしている。また、救急隊に中止の指示ができるようにするため、本人の事前の意思表示やかかりつけ医の指示について文書のひな形を作ることも検討されている。ホスピスや緩和ケアなどの終末期医療においては患者の事前指示の尊重が強調されてきたが、緊急性の高い救急現場では本人意思の確認も難しく、応急措置をしたほうが後々トラブルになりにくいという認識も根強い。在宅や施設での看取りが今後、増加することが見込まれている中、医療・介護などの現場も十分に検討したうえで社会的コンセンサスを求める必要がある。