生物の持つ遺伝子の中の特定な遺伝子(塩基配列)を切断し、細胞の持っているDNA修復機構を利用して改変する技術。1973年に開発された遺伝子組み換え技術は制限酵素を利用することで遺伝子操作を可能にしたが、目標とする遺伝子を改変するには精度が足りず、技術的利用には制約もあった。その後、ゲノム編集技術は96年に「ZFN」、2010年に「TALEN」という核酸分解酵素が開発されて発展し、13年に「CRISPR-Cas9」という同種の酵素が開発されると、格段に高効率・安価・簡便となった。さまざまな生物への応用も可能になり、人体への臨床応用も期待されるようになった。15年4月に中国で、17年8月にアメリカでヒト受精卵に対してゲノム編集による遺伝子操作が行われ、日本でも研究の動向が注目されていた。その中で、17年11月21日に政府の生命倫理専門調査会が、ゲノム編集を利用したヒト受精卵の遺伝子操作を行う基礎研究を条件付きで容認する報告書をまとめた。そこでは、受精卵で働く遺伝子を研究する基礎研究に限定し、遺伝子を改変した受精卵の子宮への移植などの臨床応用は倫理面や安全面から認めないとした。また、ゲノム編集には目標以外の遺伝子を切断してしまうリスク(オフターゲット作用)があり、がん化の可能性も指摘されるなど、ヒトへの応用にはまだまだ慎重に対応すべき問題が残っている。