大腸菌はヒトも含めたほ乳類や鳥類の腸管に寄生する細菌で、モデル生物の一つとして、各種の研究で材料とされるほか、遺伝子を組み込んで有用な化学物質の生産にも利用されている。しかし、腸外に出ることなどで病原細菌となることがある。その一つ、O-157には、ベロ毒素(Vero toxin)という強力な毒素を作り出す性質がある。この毒素は、体内に侵入すると大腸の潰瘍や血管壁の破壊による出血を起こす。さらに腎機能障害を起こしたり、脳や神経にも影響して意識障害を起こすなど、短期間で生命を奪うこともある。激しい腹痛から、頻回の下痢、血便が出るようになる。腎臓に障害を来たすと尿が出にくくなり、体のむくみが出てくるし、さらにひどくなると尿毒症になり、強いけいれんや意識障害を引き起こすこともある。