抗菌・抗ウイルス性薬剤に対する耐性のことで、主に抗生物質、化学療法剤に対する耐性をさす。現在、存在している細菌やウイルスは自然の実験の過程を通じて環境に最もフィットしたものと言える。薬剤の存在は大きな選択圧となり、それの影響を受けにくいものの増殖を許すことになる。有名なものとしてはメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)4や薬剤耐性HIV-1が挙げられる。細菌の耐性機序はさまざまであるが、(1)薬剤の不活化、(2)薬剤レセプターの変化、(3)膜透過性の低下、(4)酵素量の増加などがある。薬剤耐性菌の増加は化学療法上の大きな問題で、新しい抗生物質・化学療法剤の開発と、それに対する耐性菌の出現は、いたちごっこをみるようである。一方、抗ウイルス剤はウイルスの酵素を標的にしている場合が多く、ウイルスでは自らの遺伝子を変異させることで薬剤から逃避していることが多い。エイズの高活性抗レトロウイルス療法では逆転写酵素やプロテアーゼというウイルス側酵素の変異が耐性ウイルスにみられ、問題となっている。