HIV感染にみられる神経障害の原因は、免疫力の低下に伴って中枢神経系に生じたトキソプラズマ、クリプトコッカス、各種ウイルスなどの日和見感染、リンパ腫などの腫瘍性病変が主因の2次脳症と、HIVの直接関与による脳症の2つに大別される。後者がいわゆるHIV痴呆症候群で、正確な発症頻度は不明であるが、エイズ患者の半数に認められると推定される。臨床症状は、物忘れしやすくなる、返応答の遅延、集中力の欠如、積極性の低下、無気力などの症状がみられる。運動面では平衡能力の低下、歩行困難や下肢に力が入らないなどの症状がみられる。最後に重度の痴呆に陥るが、治療薬として血液脳関門をよく通過することが確認されているAZTが奏功することがある。