水平感染が感染対象が同世代の仲間であるのに対し、垂直感染は世代を超えて次世代に感染が受け継がれるという点が重要である。母子感染はほとんど、垂直感染と同義の意味で使われる。多くの微生物がその原因となっているが、代表的な微生物とその感染経路は、以下のとおりである。子宮内感染 : 経胎盤(風疹ウイルス、水痘ウイルス、HIV、ヒトパルボウイルスB19、トキソプラズマ、梅毒トレポネーマ、結核菌)、上行性・経羊水(大腸菌、溶連菌)、産道感染(B型肝炎ウイルス、HIV、単純ヘルペスウイルス、クラミジア、淋菌)、母乳感染(HIV、HTLV-1、B型肝炎ウイルス)。これらの母子感染は先天的な胎児異常の原因や流産・死産の原因にもなる。妊娠初期の感染に限って異常を起こす例が風疹ウイルスである。サイトメガロウイルスによる小頭症は、感染による脳の発育障害の結果である。さらに子どもが無事に育っても、ウイルスのキャリアになるケースもあり、かつて遺伝性のように伝わると思われたウイルスもある(潜伏感染、無症状感染)。エイズ(HIV)は、経胎盤、産道、母乳のすべての感染経路で感染し得る。