エルシニア菌による細菌性胃腸炎。代表的な食中毒の一つである。潜伏期間は平均7日以内で、症状は比較的軽度であり、吐き気を伴った腹痛などを起こす。下痢はまれ。発症者は小児に多い。年長児では回盲部(小腸から大腸への移行部)に病変を起こすことがあり、虫垂炎との鑑別が必要となる。この菌は多くの動物の腸管に寄生しており、豚、牛、犬、猫、モルモット、ネズミなどの哺乳類、そしてカエルや魚類のふん便からも検出されるが、代表的な保菌動物は豚である。エルシニア菌は、冷蔵庫の中でも増殖するので、長期間冷蔵保存した豚肉には注意が必要である。加熱処理で殺菌される。免疫抑制状態の患者では重症化し、血中に広がり、全身性感染症となる。