大規模な食中毒を起こす病原菌の一つ。サルモネラ菌として分類される菌には非常に種類が多く、熱発に続いて重篤な腸出血や腸穿孔などを起こすチフス菌やパラチフス菌もその仲間であるが、一般的にはサルモネラ・エンテリティディス(salmonella enteritidis)による食中毒がもっとも多い。食物にこの菌が混入すると、食後8~48 時間の潜伏期を経て、急性胃腸炎を引き起こす。症状は、吐き気や嘔吐(おうと)で始まり、数時間後に腹痛ならびに下痢を起こす。小児は重症化しやすく要注意。治療の原則は下痢による脱水の補正と、腹痛など胃腸炎症状の緩和にとどめる。サルモネラは自然界の随所に存在し、ペット、鳥類、爬虫類、両生類にも見つかる。とくに家畜(豚、鶏、牛)の腸管内の常在菌であるために、海外では鶏卵を原因とするサルモネラ食中毒が多く、注意が必要である。日本では、鶏卵の衛生管理が優れているためにサルモネラ菌の汚染はなく、生卵を食べることができる。