皮脂腺や毛穴に常在する、マラセチアという真菌(カビ)による感染症。菌が分泌する脂肪分解酵素のリパーゼにより、皮脂が遊離脂肪酸とグリセリンに分解され、酸化した遊離脂肪酸が毒性の過酸化脂質に変化するため炎症が起こる。上体の毛包部に赤いニキビ状の丘疹ができるマラセチア毛包炎、鼻の周辺や頭皮など、皮脂分泌が多い局部に湿疹が起こる脂漏性皮膚炎、体に淡褐色斑あるは脱色斑ができる癜風(でんぷう)は、いずれもマラセチア感染症である。かゆみを伴い、皮膚が荒れてかさついたり、はがれ落ちることもある。頭皮に脂漏性皮膚炎が起こると、フケが多く出るようになる。これらの感染症は皮膚科を受診し、顕微鏡検査により診断が確定する。抗真菌剤として、ケトコナゾール外用がもっとも有効である。しかし症状が繰り返すこともあり、注意が必要である。この真菌はヒトに限らずイヌにも常在しており、マラセチア感染症はペットの病気でもある。