遺伝的なアレルギー体質(アトピー素因)を持つ人に起こりやすい、増悪・寛解を繰り返すかゆみの伴う湿疹を主とする病気で、国内で150万人の推定患者がいるといわれている。乳幼児期に発症して思春期には治癒していく場合が多いが、時には成人になるまで持続することもある。かゆみが強いためひっかき傷が多く見られ、皮膚の感染症も合併しやすく、これにより皮膚炎も悪化する悪循環になりやすい。治療はステロイドの外用薬が主体になるが、ステロイドの副作用についてマスコミなどで過剰に取り上げられるので、治療医と患者や家族との共同作業が困難な場合も多い。そのため、免疫調整外用剤であるタクロリムス外用剤が広く皮膚科臨床の場で使われている。アレルギー疾患は、ぜんそく、花粉症なども含め治療法が確立されておらず民間療法の横行など治療現場での混乱が見られている。日本皮膚科学会は、2000年にアトピー性皮膚炎治療ガイドライン(日本皮膚科学会雑誌110(7))を公表し、以降改訂が重ねられている。厚生科学研究班からは1999年に『アトピー性皮膚炎ガイドライン1999』が発表され、その後第4版(2005年版)まで発行されている。また、08年には『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン』も発表された。