1990年代半ば以降世界的に急速に注目されてきた医療の考え方で、直訳すれば「根拠に基づいた医療」とされる。このEBMの提唱者の代表的存在であるデビッド・サケットが、68年に発表した論文によれば「EBMとは、個々の患者の医療を行う上で、現時点で入手可能な最良の根拠を、良心的に明示的に分別を持って利用することである」とされる。従来の医療は、個人の医師またはチームとしての医師団の経験という根拠に基づいて行われてきた。一方、EBMは、統計学的疫学をその信頼度に応じて分類しスコア化して、より客観的判断をしようとするものである。情報化社会である今日、医療判断の指針を作ることは、良質な医療の実施には不可欠であり、EBMに基づいた各疾患の医療ガイドライン(標準治療指針)の充実が望まれるところである。臨床の現場では、そういったEBMに加え、患者の心理学的情況と社会学的背景の要素を加味して医療判断がなされるべきであろう。