日本語としては「初期診療」や「一次医療」が使われることが多い。世界保健機関(WHO)では「人類の健康状態を改善させるために必要なすべての要素を地域レベルで統合する手段をいい、国家保健システムに組み込まれていて、予防、健康増進、治療、社会復帰、地域開発活動すべてを含む」と定義し、包括的医療の考えを広める中核的概念としている。日本では、まだ医療関係者のみで使われることが多く「プライマリーヘルスケア」ではなく「プライマリーケア」といい、「病気やけがをしたとき最初に受ける医療」という意味に限定して使われることが多い。プライマリーケア医は、一般医、家庭医などとも呼ばれ、専門医に比し、軽く扱われがちであった。最近になり、総合的医療こそ優秀な人材が必要であることが認識されるようになり、日米の大学でもプライマリーケアの専門医を養成する講座が新しく生まれつつある。しかし、現状の日本では、専門医ではないという意味だけで、特別な研修や臨床経験もないのに「総合医」と称したり大学の老年内科などのスタッフが総合内科やプライマリーケア部門の役職を兼ねたりするなど不完全な形が散見され、本格的なプライマリーケアの教育システムはまだ発展途上である。大学医学部での「研究教授」に対し、一線の臨床に携わる医師が「臨床教授」として医学生や研修医の教育に参加するシステムが強く望まれる。