「手術直後に患者が亡くなってしまった」などの医療事故が起こった場合、それが人為的なミスによるものか、偶発的なものなのかを判断するのが難しいケースが少なくない。医療版事故調査委員会は、事故の原因やその背景を詳細に調べ、真相を明らかにすることを目的とする組織である。具体的にはカルテのチェックや関係者からの聞き取り調査を通じて、事故の原因や今後の予防策について検討し、報告書を作成することが義務付けられる。構成する委員が、問題となった病院内の医療関係者だけでは信頼性に問題があるため、委員会は第三者として他の病院の医師や弁護士が中心となって行われる場合が多い。事故に何らかの人為的ミスがあった場合は、その責任の所在を明らかにする必要があることは言うまでもない。しかし同時に仕事の手順や医療者の労働環境などに問題がなかったかを検討し、事故が起きてしまった背景にも言及することで、再発の防止に向けた取り組みを行うことが強く求められている。なお、厚生労働省は公的な医療事故調査制度の検討を進めており、2007年10月に公表された試案では、医療機関に対し(警察ではなく)厚生労働省への死亡事故の届け出を義務付けているのが特徴である。これは、医療事故の調査主体が警察や司法から行政に移されることを意味しており、責任追及よりも再発防止や真相究明に重点を置いている点が注目されている。