2006年の診療報酬改定により新しく設置された制度で、通院が困難な在宅患者からの連絡を24時間体制で受け付け、いつでも往診・訪問看護を提供できる診療所のことである。これまで、末期のがん患者や認知症高齢者など、積極的な治療は必要ないものの、自宅で自立した生活を送ることが難しい患者は、長期療養型の病院で過ごすことを余儀なくされるケースが多く、「姥捨て山」といった批判もあった。この状況を是正し、できるだけ多くの患者を自宅で過ごせるようにすることで、患者本人の生活の質を高めると同時に、医療費を削減するのがこの制度の主な狙いである。具体的には、医師や看護師が患者を定期的に往診し、自宅での生活をサポートする。食事が取れない、体調が悪化するなどといったことがあれば点滴や経管栄養などを用いた在宅治療を行い、末期がんの患者にはモルヒネを用いた疼痛管理も行う。入院療養から在宅療養への転換を推進する厚生労働省の方針により、現在は在宅療養支援診療所に対して、一般の診療所よりも高い診療報酬が設定されている。在宅療養支援診療所に指定されるための条件としては、24時間体制で往診や訪問介護の提供ができることや、ケアマネジャーとの連携により介護サービスを紹介できることなどがある。今後、高齢者の増加に伴い、自宅でのターミナルケア(終末期ケア)や慢性疾患の療養、ひいては住み慣れた家で亡くなる「在宅死」における、中心的存在になることが期待されている。