100%の酸素を、圧力の高い部屋(高気圧治療装置)で吸引する治療法のこと。2002年にサッカーのイングランド代表ベッカム選手や、06年に早稲田実業の斎藤佑樹投手などが、骨折の修復や疲労回復を目的として酸素カプセルを使用したことで注目を集めた。医療行為としての高気圧酸素治療法では、大量の酸素を身体内に送り込むことによって、酸素不足の組織やダメージを受けている病巣の回復を期待する。学会や厚生労働省の基準では、2絶対気圧(大気圧の2倍)で1時間以上100%酸素を呼吸することと定義されている。通常、赤血球中のヘモグロビンの95%以上が酸素と結びついているが、高気圧酸素治療を行うとほぼ100%のヘモグロビンが酸素と結びつく(結合型酸素)。さらに、高気圧下であるため、圧力に応じて血液中の水分自体に酸素がより多く溶け込む(溶解型酸素)。これらの酸素が治療効果を発揮する。具体的には、組織の酸素不足・欠乏の改善、ケガの修復、滅菌作用、悪性腫瘍に対する放射線療法の効果を高める、身体内の窒素排出による減圧症の治療、血栓の抑制などの効果が期待される。適応は一酸化炭素中毒、空気塞栓症、減圧症、ガス壊疽(嫌気性菌感染)、コンパートメント症候群などである。なお、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、シスプラチンの投与との併用や、未治療の気胸患者に対する治療は禁忌である。