騒音にさらされたために生じる聴覚障害のこと。造船所勤務者、道路工事従事者、電話交換手など、長期間にわたって騒音の中で勤務した者に見られる職業性のものと、ロックコンサートやディスコなどに行った際に大音響を耳のそばから受けて生じるもの(音響外傷)がある。職業性の騒音性難聴では高音域(4000ヘルツ)から聴覚の障害が現れるため、初期には日常会話(500~2000ヘルツ)に不自由を感じることがなく、職場の健診などで発見されることが多い。聴力検査により、病初期には4000ヘルツ付近の聴力低下(C5dipと呼ばれる)がみられ、比較的容易に診断できるが、進行した者では全般的な聴力低下となり、老人性難聴や薬剤性難聴と区別が難しくなる。このため、問診で騒音下作業の職歴の有無を確認する。血圧の低い人、中耳炎や頭部打撲、慢性扁桃炎や蓄膿症の既往者、ストレプトマイシン注射を受けたことがある者では騒音性難聴をきたしやすいといわれる。近年、携帯型の音楽プレーヤーの普及から、職業によらずヘッドホンを日常的に使用する者に、騒音性難聴が増加している。予防と発症後の悪化防止には、騒音を防止することが第一であり、騒音下での作業をしないことや、耳栓を使用することが重要である。