人工多能性幹細胞の略称。体細胞へ特定の4因子を導入することにより、胚性幹細胞(ES細胞)に似た分化多能性(様々な種類の細胞に分化しうる能力)を持たせた細胞のこと。京都大学の山中伸弥教授らのグループによって、2006年8月にマウスiPS細胞、07年11月にヒトiPS細胞が世界に先駆けて樹立された。ヒトES細胞は、高い増殖能と様々な細胞への分化能を有することから再生医学への応用が期待されていたが、第三者のヒト受精卵から作製するため、細胞移植における拒絶反応や倫理的な問題が懸念されていた。これに比べ、ヒトiPS細胞は自身の体細胞(皮膚細胞)から作製できるため、資源が入手しやすく、移植に際して拒絶反応の心配もなく、さらに倫理的にも受け入れられやすいことが特徴である。iPS細胞の開発は、多くの疾患に対する細胞移植療法の実現への大きな躍進となるのみならず、疾患の原因究明、新薬開発などにも役立つことが期待されている。