特別の定義を有する言葉ではないが、2003~04年ごろから医療関係者の間で警告としてよく使われるようになった言葉。02年、慈恵医大青戸病院事件と呼ばれる医療事故を契機に、医療事故や医療ミスが刑事事件として告発されることが多くなったことが医療崩壊の引き金になったと考えられている。そのベースには政府が一貫して進める医療費削減方針や、医局制度崩壊による医師の再配置システムの変容などがある。また、医療事故や医療費増大問題、医師の所得などについてのマスコミ報道などが激化したことが医師のマインド低下に加担したという意見も多い。こういった結果、激務にやっと耐えていた一線の医師たちの使命感が急激に低下し、大学病院や総合病院を辞めたり、救急や外科系などのリスクの高い専門分野から撤退する医師が増加し、相対的な医師不足をきたし、社会保障としての医療が揺らぎ始めた。こういった一連の流れが、医療崩壊と呼ばれている。