従来から日本で使われてきた意味は、「行きつけのクリニックや病院の医師」といったあいまいなもの。日本の保険制度においては、病気にならないと保険で医師にみてもらうことができないため、かかりつけ医といっても生活習慣病など慢性疾患の担当医や、かぜ、軽い胃腸障害などのような病気のときにまず受診する医師という意味合いになる。イギリスの伝統的な家庭医制度やドイツやフランスで導入された「かかりつけ医」制度は、あらかじめ選定した医師をかかりつけ医として、すべての診療の窓口とするものであり、自由に医師を選べるフリーアクセスの日本の医療制度とは根本的に事情が異なっている。日本でも2008年4月より後期高齢者医療制度の中で、かかりつけ医を選定するシステム(後期高齢者担当医制度)ができたが、09年1月現在、国民側からも医師側からも十分な評価を得ていない。医師会や厚生労働省では、かかりつけ医を通して、大病院の専門医を受診させる流れを作ろうと、病院と診療所の連携を進めるよう指導している。いずれにせよ、現在の日本の保険制度では、後期高齢者担当医制度以外、病気が確定するまでの相談や助言に報酬を与える規定がないために本格的なかかりつけ医制度は定着が困難である。保険を使うことはできないが、かかりつけ医の機能をさらに高めた「侍医」のようなシステムを開発し、提供している民間医療機関もある。