急性障害をきたさない程度の、低い線量の放射線被曝のこと。一般的には、おおむね数十ミリシーベルト(mSv)以下の被曝をいうが、明確な定義はない。放射線被曝は、確定的影響と確率的影響とに分けられる。確定的影響は急性障害とほぼ同義で、1シーベルトを超えた被曝による、骨髄、消化管、生殖器、皮膚の障害などが知られている。一方、確率的影響は将来的な発がんや遺伝的影響のことを指し、低線量被曝もこれに含まれる。確率的影響に閾値(しきいち)はなく、線量と発がん率などは正比例関係にあるとしているのが特徴で、低線量でもわずかな確率ながら、発がんや遺伝に影響を与えうるだろう、と考えられている。反対に低線量放射線は人体に有益である、とする説(ホルミシス効果)も提唱されているが、世界保健機関(WHO)やアメリカの研究者の間では支持されていない。低線量被曝の健康への影響は、放射線に触れる機会が多い原子力発電所や医療研究機関に勤務する人、原子力発電所事故の被災者、原子爆弾被爆者などの間で懸念されている。