脳腫瘍摘出手術の際、体の麻痺や失語症などの後遺症を防ぐと同時に、できるだけ多くの病変部を除去する目的で、手術中の患者を覚醒状態に保ち、脳神経への侵襲を評価しながら手術する方法である。患者は頭の骨の一部を外され、脳がむき出しの状態であるが意識は鮮明である。執刀医は患者の言葉や手の動きなどを見ながら、脳腫瘍を慎重に摘出していく。脳腫瘍の治療には腫瘍をできる限り多く切除することが必要だが、脳組織を傷つけると体の麻痺や失語症などが残る恐れもあるため、“腫瘍を多く切除しつつ後遺症を防ぐ”という二律背反の難題を解決するのがこの手術法である。従来の手術では腫瘍全体の70%が切除できれば成功とされてきたが、覚醒手術の場合95%くらいまでとする実績もある。また、良性脳腫瘍の場合4年後の生存率は100%と、従来の手術に比べ2~3割高いとの報告もある。脳腫瘍の他、海綿状血管腫、てんかんなどにも実施されている。