腹壁内側、胃腸壁外側、横隔膜下面などの表面は、腹膜という、表面積が1.7~2.0平方メートルにおよぶ連続した膜状組織によって覆われており、腹腔を形成する。腹膜透析とは、腹腔に1日4回前後透析液の注入と排出を行い、腹膜に分布する毛細血管と、腹腔内に貯留した透析液との間で、水分と物質を移動させることにより、体液の浄化・調節を行う腎不全治療法である。腹膜透析のシステムには、日中活動時の透析液交換を主体とするCAPD(continuous ambulatory peritoneal dialysis)と、夜間睡眠中の透析液交換を主体とするAPD(automated peritoneal dialysis)がある。腹膜透析用カテーテルを腹膜内に留置する手術が必要である。血液透析に比べた利点は(1)尿毒素・体液量の変動が少ない、(2)通院頻度が少ない、(3)透析開始後も自らの腎臓が出す尿量を長く維持できる、(4)生野菜・果物などのカリウム摂取の制限がほとんどないなどである。高浸透圧ブドウ糖液に代わるイコデキストリンの使用など、腹膜硬化・腹膜炎といった合併症の予防を目指したシステムの改良が進んでいる。