インスリンは細胞への糖取り込みを促進させるホルモンであり、糖尿病はインスリンの絶対的または相対的作用不足により起こる、高血糖状態を主徴とする疾患群である。その成因によりインスリンを合成・分泌する膵島のβ細胞が自己免疫性または突発性に破壊されて絶対的インスリン欠乏に至る1型糖尿病、インスリン抵抗性やインスリン分泌低下をきたす素因を含む複数の遺伝子に過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり、相対的インスリン欠乏に至る2型糖尿病、さらに妊娠糖尿病、その他に分類される。1型糖尿病の治療ではインスリン自己注射療法やインスリンポンプが必要不可欠であり、2型糖尿病および妊娠糖尿病の治療には生活習慣の改善、経口血糖降下薬や1型同様のインスリン治療などがある。糖尿病患者数は増大の一途にあり、厚生労働省の「糖尿病実態調査」(2003年)によると推計740万人、境界型を含めると1620万人にのぼる。口渇・多飲・多尿・体重減少といった特徴的な症状は、血糖値がかなり上昇するまで出現しないことも多いため、病院受診時や健康診断時に初めて糖尿病を指摘される場合も多い。また、自覚症状がないために高血糖を指摘されながら放置する患者も多く、そのために糖尿病合併症が重症化する場合が少なくない。糖尿病合併症には、糖尿病網膜症(成人失明原因の1位)、糖尿病腎症(新規透析導入原因の1位)、糖尿病神経障害(しびれ、疼痛、起立性低血圧、勃起障害[ED]などをきたす)という糖尿病三大合併症や動脈硬化症(脳卒中、心筋梗塞、糖尿病壊疽などの原因)がある。合併症の進展を防ぐためには、日頃からの血糖コントロールが重要である。