前立腺は、男性の膀胱直下に尿道の周囲を取り巻くように位置する臓器で、精液の液体成分を分泌する機能を担っている。通常、前立腺はクルミくらいの大きさ(約20グラム)であるが、早くは30~40歳より肥大が始まり、病理学的には70歳以上になると70%以上の人に肥大が見られる。年齢とともに前立腺が肥大する原因は不明だが、思春期前に去勢した場合はこの疾患が発生しないことから、男性ホルモンが関係していると考えられる。尿が細くなり、出終わるまでに時間がかかる、または尿が出きらないので回数が増え、尿が近くなるといった症状を認める。最近はより客観的に診断するため、症状を国際前立腺スコア(I-PSS)を用いて数値化し、重症度判定をするようになった。診断は直腸指診、超音波検査、腫瘍マーカー検査(PSA)、膀胱内圧測定などの検査により行われる。前立腺がんを除外することが大切である。治療法としては、内科的治療と外科的治療がある。軽症例には内科療法としてα1ブロッカー、植物エキス配合剤、抗男性ホルモン剤、抗コリン剤、抗ムスカリン剤、漢方などの薬物療法が行われている。薬物療法で効果のない重症例には、経尿道的前立腺切除術(TURP)、前立腺摘出術、温熱療法、経尿道拡張術、尿道ステント、レーザー療法などの外科的療法が行われる。