長時間に及ぶ筋肉圧迫による骨格筋細胞の壊死が原因となり、筋細胞から細胞内成分が放出され、高カリウム症・急性腎不全などを生じること。挫滅症候群ともいい、災害現場や戦場で見られる。筋肉から放出されたミオグロビンによる赤褐色の尿、腎機能障害による尿量減少で気づかれることが多く、脱水状態で病態が悪化する。阪神・淡路大震災の際は375例発症して50例が死亡した。腎不全発症を予防することが重要で、輸液を主とする治療を早期に開始できるか否かが患者の明暗を左右する。災害現場に医師などが赴き、閉じ込められている生存者に対し救出前に治療を開始する「がれきの下の医療(CSM ; confined space medicine)」が効果的である。2005年のJR福知山線脱線事故では本格的なCSMが行われ、阪神・淡路大震災の教訓が生かされた。また、災害時に速やかに対応できるよう「災害時医療支援隊(DMAT ; disaster medical assistance team)」が組織されている。