遺伝子診断とは、対象となる人の血液や体液、組織、場合によっては受精卵(日本産科婦人科学会は重篤な遺伝病に限り承認)などから、染色体やDNA、RNAなどの遺伝子や、異常にかかわるたんぱく質や特定の代謝物を抽出し、発症の有無にかかわらず遺伝的な異常を解析することである。検査目的には、診断の確定、新生児のスクリーニング、ハイリスク家系における保因者の同定、出生前診断、疾患発症リスクの予測などが含まれるが、治療方法の確立していない疾患に対する遺伝学的検査は、患者および血縁者の遺伝的素因を明らかにし、本人の将来だけでなく家族に対しても重大な影響を与えうる。その取り扱いによっては、様々な倫理的、法的または社会的な問題を招く危険性があり、事前の十分な説明と自由意志による同意(インフォームド・コンセント)およびそれに携わる者の倫理は必須である。日本では、2001年に厚生労働省、文部科学省、経済産業省の三者により「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が告示され(04年に全面改正)、すべての遺伝子解析にかかわる医師・研究者に順守を求めている。