従来行われてきた単一臓器疾患に対する単一臓器移植とは異なり、同一ドナー(提供者)から複数の臓器を同一のレシピエント(患者)に移植することをいう。臓器移植を必要とする患者に対し、障害が複数臓器にわたる場合、これらの複合臓器障害を同時に解決する治療として複数臓器の同時移植が行われる。現在、日本においては、膵臓・腎臓同時移植が広く行われている。肝臓と腎臓、肝臓と小腸といった組み合わせ移植も行われ、海外では心臓と肺、心臓と肝臓・腎臓、肝臓・小腸・大腸・胃・膵臓・脾臓といった腹部多臓器同時移植も行われている。特に膵臓移植のほとんどは、慢性腎不全合併1型糖尿病患者に対する膵臓・腎臓同時移植として行われているのが現状である。腹部多臓器同時移植は、肝臓と小腸を含む四つ以上の臓器を患者の臓器を摘出した上で移植する手術を指すことが多く、患者のほとんどは先天異常をはじめとした小腸疾患を持つ小児で、1990年頃からアメリカを中心に行われている。